太陽光発電を考えてみる

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住宅の屋根を見るとずいぶん黒いパネルが乗っている家が多くなってきました。太陽光発電パネルです。広島は全国8位と晴天率も高く、太陽光発電には有利な土地となっています。省エネ施策が進む中、住宅分野でも各種の補助金に断熱性能の強化とともに太陽光発電システムの搭載が求められるようになっています。東京都では新築住宅への太陽光発電パネルの設置を義務化するという議論も進んでいるようです。断熱気密によって家の保温性をあげるだけでなく太陽光発電も必要なの?という質問もよく頂きます。現時点(2022年4月)での太陽光発電についてまとめてみたいと思います。

 

Contents

太陽光発電システムの概要

 

皆さんご存じの通り、太陽の光で電気をつくることのできるシステムです。住宅では主に屋根の上に設置されます。屋根の上は基本的に空いていることと、雨水を流すための屋根の勾配が、太陽光を受け取るパネルの効率にちょうどよいためです。太陽光発電は太陽の光を受けて電気をつくるので、日中日の当たる時にしか発電することができません。太陽光の量で発電量も変わってくるので、夏発電量が多く、冬は発電量が少なくなります。また雨の日や曇りの日にも発電量が小さくなってしまいます。このように発電量が天気や季節によって大きく変わってしまうのが特徴です。

システムとしては屋根の上に載せる発電パネルと電気を制御するパワコンと呼ばれる機械で構成されています。一般的に普通の住宅に載せるのは5KW前後が標準的ですが、これはパワコン一台で賄える最大量からきているようです。機械もののためパワコンが一番交換などのメンテナンスが多く発生することもあるでしょう。家の向きや陽当たりなどの条件にもよりますが、5KWのシステムで、30坪少々G2クラスの家の年間電気代の約半分を賄えるくらいの電気を発電することができます。

太陽光発電で発電した電気は自分の家で使ったり、余った分を電力会社に売却することができます。FIT(固定価格買取制度)という制度があり、余った電気は決まった金額で電力会社に売却することができます。この金額は設置した年によって変化し、10年間維持されます。その後は買取価格が減少していきます。

太陽光発電システムの価格は依然と比べこなれてきていますし、蓄電池などのシステムも次第に充実してきているので、設置のハードルは下がりかつ選択肢も増えてきています。しかし、FIT(固定価格買取制度)の電気買取価格は年々下がっていますので、売電するよりもいかに効率よく自家消費するかが今後の運用のカギになってきています。

 

太陽光の電気は昼使う

太陽光発電で発電した電気はまず自家消費に回されます。つまりお昼に発電している電気を、お昼に動いている家電などの電力に充てることになりますので、冷蔵庫、TV、各種待機電力、換気システム、全館空調ならば空調機器などを賄います。しかし、今は共働きの家庭も多く、日中家を空けていることが多いので、実際のところは自家消費する量は一部で、あとは電力会社に売電することになります。ここがポイントになってきます。2022年時点で10KW未満の電気の売電価格は17円/KWhですから、電力会社で購入する電気料金が約27円/KWhとすると(※正確には契約の内容によって変わってきます)、つくった電気を売るよりも自分ちで使った方が1KWhあたり10円も得になるということになります。そう考えていくと、お昼の時間の余った電気を使ってエコキュート(電気温水器)を動かしてお湯を沸かしておいたり、電気自動車を充電したりと、電気を効率よく使う工夫をしていくことがお財布にも環境にも優しいことになります。

 

蓄電池併用で夜も使う

 

そこで出てくるのが蓄電池です。蓄電池にはお昼に余った電気をためておくことができます。そして太陽が沈んだ後、ためておいた電気を使うことができます。ただでつくった電気で普通なら購入する電気をまかなっていくのでその分電気の購入量をへらすことができます。蓄電池の組み合わせで3KWh~30KWh程度まで蓄電できるようです。例として32坪G2レベルの断熱性能を持った家でシミュレーションしてみると、月間の平均の電気代が約18000円、電気代が27円/KWhとすると、使用電気量が667KWh、30日で割ると、だいたい1日に22KWhの電気を使っている計算になります。先ほども書いたように電気の使用量は家族がそろう夜間の方が多くなってきますので、この2/3を夜間に使うとすると約14KWh。このくらいあれば季節も天気が良い時には一日中太陽光で発電した電気で過ごすことができそうです。

 

蓄電池のもう一つの大きな役割は災害時の電力供給です。災害で停電が発生した時、太陽光発電システムだけでも、お昼の発電時には電力を供給することができまるのですが、使用できる電力量に制限があり最低限のものしか動かすことはできませんし、当然夜間は完全に電力供給が断たれてしまいます。蓄電池があれば平時と同様に夜間も電力供給を続けることができます。特に夏期の冷蔵庫の電力確保や、夏冬の暑さ寒さへの対応には大きく力になってくれます。

蓄電池はまだまだ発展途上の機器になりますから、より性能が向上する余地が十分にあると思いますので、いずれは太陽光発電との組み合わせで、オフグリッド、電力会社を必要としない地産地消の電力供給が可能になるかもしれませんね。

 

気になるところ

そうはいっても太陽光発電システムにも気になるところがいくつかあります。

1.建物の美観が損なわれる
住宅の美しさは屋根の美しさだと言われます。大きな屋根がすらっと見えるのはやはり気持ちのよいものです。太陽光パネルはどうしても存在感があるので、屋根の美観を崩してしまう所があります。また太陽光発電は太陽光を多く受けることのできる南向きの屋根に設置するカタチが効率が良いのですが、そのためにプランや建物の形状が決められてくると、少しもったいないように思います。条件にもよりますが、設置方向が真南から少し振ったとしても発電効率は数%単位でしか変化しないので、まずはプランを優先するのもよいと思います。

2.漏水・メンテナンス
太陽光パネルは屋根の上に金物で取り付けます。新築時であれば同時施工で屋根材を貫通しないように取り付けることができるのですが、後から設置する場合にはなかなかそうはいきません。屋根の防水、雨漏りを防ぐ観点からはしっかりと注意を払った施工が不可欠です。そして経年によるほこりなどの汚れなどで発電効率が下がってくることがあります。屋根の上ですからなかなか直接の掃除が難しい所があります。特に幹線道路沿いなどでは排気ほこりが強いので注意が必要です。

3.パネルの廃棄
太陽光発電パネルも寿命がありますので、いつかは更新・廃棄が必要になってきます。この準備をしておくことが必要です。

 

まとめ

省エネが求められている現在では、太陽光発電システムは、クリーンなシステムによる電力確保・災害対策の面からとても有益なシステムとなっています。設置のための初期費用もずいぶんと下がっており、取り付けやすい状況になっています。ただし、余剰電気の買取価格も合わせて下がっているため、条件にもよりますが減価償却いわゆるもとをとるまでには10~20年必要となります。蓄電池の活用も含め、昼間に発電した電気をうまく活用し、自家消費を増やすことが有効な運用方法となりそうです。在宅の職業の方や、テレワークの比率の高い方など昼間におうちにいらっしゃる方には昼間の電力をたくさん使えるのでピッタリです。

つい先日にも関東では電力供給がピンチになり節電要求がなされました。ウクライナの件もあり、エネルギー問題はますます顕著になっており、将来的な電気料金の上昇は疑いのないものになっています。すぐそばにある自然の中から自分たちが使う分の電気エネルギーをとりだし使っていくことは、エネルギーの地産地消ともいえる活動ではないかと思います。

太陽光発電パネルも住宅建築の一部。建物本体との関係や空調システム、コストなど全体のバランスをとって計画していくことが素敵な住まいをつくる上で大切なことだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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