100mの微気候 ― 広島の気候と温熱設計

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標高差100mの違い

先日の冷え込みで山間部ではずいぶんと雪が積もったようです。
道路も凍結し、僕も通勤に普段の倍の時間がかかりました。

僕の住んでいるのは海に近い標高3mの市街地エリア。
会社はそこから10kmほど山側に入った標高104mの郊外です。
この雪の積もった日の朝、両者の様子を見てみると驚くほどの違いがありました。

その様子がこちら↓

 

 

見ての通り、市街地では全く雪が積もっていないにも関わらず、
郊外では約3~5㎝雪が積もっています。
たった100mの差でこれだけ違うんですね。

一般的に高度が100m変わると気温が0.6度下がると言われています。
しかし、実際は住まいと会社とで2度程度温度差があるようです。

これは標高差に加え、山が近いことや、谷間筋に位置していることなど地形の影響が大きいようです。

 

地形の影響 -微気候-

 

うちの会社は小さな山々のふもとの谷間筋に位置しています。
山がすぐ近いため、太陽が出る時間も遅く、陽が沈むのも早いので、日照時間が短くなっています。
そのため平地である市街地と比べると気温の上昇が小さいことになります。
また山からの吹きおろしの風が強いこともありますし、山裾で雪が降りやすいこともあります。

それらの結果がこの違いを生んでいるんですね。

このようにわずか10kmしか離れていなくてもこれだけ環境は違うのです。

小さな範囲の中での地形や環境条件の違いにより生まれる気候の変化を【微気候】と呼びます。

例えば北海道と沖縄ではまったく気候が違うのは誰もが知っていることだと思います。
逆に微気候は大きな観点から見ると同じ気候の中に分類されるのですが、地域的な風土や地形などの特性から生まれる小さな気候の違いを指したものであり、実際にその場所に住む人にとって大きな影響を与えるような要因です。今回の事例では分かりやすく大きな変化として差が出ていますが、もっと小さな違いもこの微気候に含められると考えます。例えば住宅密集地とその外れで風の通りが違うとか、植生によって気温・湿度や風の動きが変化したりなど、本当に狭い範囲の中で生まれる局所的な気候特性(と呼ぶには小さなものですが)も微気候と言えると思います。

 

地域区分と微気候

温熱性能を計算する場合、【地域区分】と呼ばれるその地域の寒さをエリア分けした地図を参照して、対象となる敷地の性能を計算していきます。
下の図が地域区分図になり、全国を1~8の地域に分類してあります。1地域が最も寒く、8地域が最も暖かいエリアです。

 

これを見ると広島市の大部分は【6地域】になっており比較的温暖な地域として設定されています。

しかし、広島市は南北に25kmほど広がっています。
今回の事例をみるように10Kmの違いでこれだけ差が出るのですから、住んでいる場所にきちんと対応した温熱性能を設計しなければあたたかい家にはなりませんよね。
そう考えると地域区分だけでなく、対象となる敷地がその区分の中で(例えば6地域の中で)どのような位置にあたるのかを【微気候】をとらえることで把握する必要がありそうです。
今回の事例で考えると僕の住まいであれば6地域の典型的なエリア、会社の方は5地域や4地域に近いエリアとして考えた方がよさそうです。

このように設定された地域区分+微気候を考えることにより、より現実に即した温熱計画を立てられるはずです。

 

微気候を把握するには

 

気候=その場所の気候的な特徴を一番よく理解できるのは、やはりその場所に住むことです。

建て替えや増築の場合は身をもって知っているはずなので、建物に反映することは難しくないと思いますが、新しい場所に新築するような場合にはなかなか難しいですよね。
ではどうするか。

一番簡単なのはその場所に住んでいる人に家づくりに関わってもらうことです。

例えば設計士さん、工務店さん、その土地を良く知っている人に相談するとよいでしょう。しかし、それらの人が温熱設計の意味と手法を理解していなければ意味がありませんよね。

敷地の地元で仕事をしており、温熱設計をしっかりとやっている作り手と家づくりができれば一番いいのではないかと思います。

 

広島の気候と温熱設計

これまで読んでいただいたように、広島市の中であってもエリアによって随分と気候条件が変わってきます。
これは広島が合併によって大きくなってきた都市であるという経緯もあります。

気候条件によって大きく分けると

①都市部エリア・・・広島市内の密集地 海際で標高が低く温暖。ほとんど雪が降らない
②住宅地エリア・・・都市部周辺の平坦な住宅密集地 
③郊外団地エリア・・・山を削ってつくられた住宅地 山に沿って作られているため標高が高いところも多く、都市部に近くても寒いところも多い
④郊外エリア・・・山側の田園地帯 標高が高く寒いエリア。山が近いため温度も下がりやすく、雪が降りやすい

のようになっています。①~④へ向かってだんだん寒い地域になっています。
まずは敷地の位置がどのエリアに入るのかを確認して、6地域寄り(暖かいエリア)なのか5地域寄り(寒いエリア)なのかを確認すると良いと思います。

そしてさらに詳しくその土地の【微気候】=山や川からの距離、1年を通じた太陽光の入り方、風の方向、植生の状態などを調べ、建築設計・温熱設計に反映していけば、きっと快適で心地よい、あたたかい家にたどり着けると思います。

土地探しをされている方は、駅や学校からの距離だけでなく、その土地の【微気候】もぜひ調べてみて下さい。

それでは楽しい家づくりを!

 

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