解説|長持ちする外壁材はなに? -おすすめ外壁材3選-

「せっかく建てた 我が家。できるだけ長く、美しく保ちたい——」
そう思って外壁材を選ぼうとしても、「何が一番長持ちするの?」「メンテナンスってどのくらい必要?」と、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
実際、外壁は建物を守る重要な役割を担っており、素材選びひとつで将来的な修繕費用や修繕頻度が大きく変わってきます。
だからこそ、初めの選択がとても大切なのです。
この記事では、本当に長持ちする外壁材をご紹介。それぞれの特徴・費用・デザイン性徹底比較しました。
「長く住むからこそ、安心できる素材を選びたい」「見た目も性能も妥協したくない」
——そんな想いに応える情報が詰まっています。
この記事を読むことで、あなたの家にぴったりな外壁材の選び方が明確になり、将来的なメンテナンスの不安を解消できるはずです。
長く快適に住まうために、今こそ見直すべき外壁の選び方を、ぜひ一緒に学んでいきましょう。
Contents
1. 長持ちする外壁の重要性
| 外壁の役割と耐久性が重要な理由
外壁は住宅を守る「第一の盾」として、日々さまざまな自然環境から建物を保護する役割を担っています。紫外線、雨風、積雪、埃など、過酷な外的要因から内部構造や居住空間を守るため、外壁の存在は非常に重要です。
また、外壁は建物の外観を決定づける要素でもあり、住まいの印象や資産価値に直結します。美しい外観を長く保つことができれば、住まいへの愛着も深まり、訪れる人々への印象も良くなります。
外壁の耐久性が低い場合、早期に劣化が進行し、雨漏りや断熱性能の低下、さらには構造体への悪影響が生じる可能性もあります。これにより、大掛かりな修繕工事やコストの発生を招く恐れがあります。
そのため、家を建てる際やリフォームを検討する際には、単に「見た目」だけでなく「どれくらい持つのか」という視点も重要になります。
長期的に見てコストパフォーマンスの高い住宅を実現するためには、外壁の耐久性を第一に考える必要があります。
|気候や環境が外壁寿命に与える影響
日本は南北に長く、地域によって気候が大きく異なります。湿度の高い地域、積雪の多い地域、台風の多い地域など、それぞれの地域環境によって外壁へのダメージの種類や程度が異なります。
たとえば湿度の高い地域ではカビや苔が発生しやすく、外壁が汚れやすいという特徴があります。これを放置すると素材の劣化が早まり、結果として外壁の寿命が短くなってしまいます。
寒冷地では凍結と融解の繰り返しによる「凍害」によって、外壁が割れたり剥がれたりするリスクがあります。また、雪の重みによって外壁構造に負荷がかかる場合もあり、素材選定には注意が必要です。
台風が多い地域では、暴風や飛来物による衝撃、豪雨による浸水などが外壁に深刻なダメージを与えることがあります。このような地域では、防水性や耐衝撃性が特に求められます。
したがって、自分が住む地域の特性を理解し、最適な外壁素材を選ぶことが住宅の長寿命化に繋がります。
| メンテナンス費用とライフサイクルコスト
外壁の選定で無視できないのが「ライフサイクルコスト(LCC)」です。初期費用だけでなく、維持管理や補修、将来的な交換費用まで含めた総合的なコスト評価が重要です。
安価な外壁材は初期コストが低く魅力的ですが、頻繁な塗り替えや補修が必要になることが多く、長期的には費用がかさむ傾向にあります。
一方、耐久性に優れた素材は初期投資が高くても、長期間にわたってメンテナンスを必要としないため、トータルコストが安く抑えられる場合があります。
自然素材の外壁材の中には、適切な施工と点検を行えば、20年〜30年にわたり美観を保つことが可能なものもあります。
また、素材によって「メンテンナンスのしやすさ」が変わってきます。メンテナンスの完全に不要な材料は存在しないので、よりメンテンナンスの回数が小さくなる素材、メンテナンスのしやすい材料を選択することが、ライフスタイルコストを小さくする大きな要素です。
このように、外壁材の選定は「短期コスト」ではなく、「長期的な安心と経済性」を基準に考えることが賢明です。
|建築基準法や耐火性能との関係
外壁材の選択には、建築基準法や地域条例の遵守が不可欠です。都市部では防火地域や準防火地域に指定されていることも多く、使用できる外壁材が制限される場合があります。
こうした地域では、耐火性・準耐火性の確保が義務付けられており、国の認定を受けた材料、または認定を受けた部材の組み合わせでなければ使用できません。
したがって、素材の特性・性能をきちんと確認し、法的な制限に対応しながら、素材の特性を活かす工夫を行うことが大切です。
|長寿命外壁を選ぶためのチェックポイント
外壁を長持ちさせるためには、複数の要素をバランス良く考慮することが必要です。素材の性能だけでなく、施工環境、地域性、メンテナンス性も重要です。
まず確認すべきは「耐用年数」です。公的データや実績がある素材を選び、防水性・通気性などの基本性能も比較しましょう。
次に「地域との適合性」です。湿度、気温、日照、風向きなど、地域ごとの気候特性に合った素材選びが求められます。
その地域で長く使われている、地域の風景の一部になっているような素材は、その地域での長い間の耐久性の実績を持っていることを示しているものであり、その風景になじむことも疑いない材料だということができますよね。
どの素材を使うとしても、その素材を家の一部へと昇華させるのは「施工する職人」になります。素材を見極め、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、熟練の技術が必要不可欠です。
「信頼できるつくり手」と協働することも、外壁を長持ちさせるための大きなポイントですね。
そして「メンテナンスのしやすさ」も選定ポイントの一つ。20年後、30年後にも安心して直すことができる素材であることを確認しましょう。
2. 人気の長持ち外壁素材の比較
|塗壁の特徴とメリット・デメリット
しっくいなどに代表される塗壁は、古くから使われてきた自然素材の外壁素材です。かつては土壁との組み合わせで美観も防火性能もクリアして長く使われてきた自然素材の外壁材です。
近代ではモルタルと組み合わせることで、防火性能にも優れ、防火・準防火地域でも使用可能で、健康や環境面にも配慮された素材です。
押え(フラット仕上)、パターン(模様仕上)など様々な表情をつくりだすことができることが特徴です。また、木板との相性も良いので「和」のイメージや「木の家」のイメージを大事にする方にはうってつけの材料です。近年ではシラス土を使った素材も人気があります。
デメリットとしては、左官職人による専門的な施工が必要で、初期費用が高い点が挙げられます。技術力のある左官さんにお願いすることが長寿命化への成功のカギとなります。
それでも、長期的なコストメリットや手間の少ないメンテナンス性を考慮すれば、非常に優れた外壁材といえます。
| 木板張りの魅力
木板張りは、日本の伝統的な建築スタイルに使われてきた温かみと柔らかさを感じる外壁仕上げです。特に自然素材を活かした住まいや、ナチュラルなデザインとの相性が抜群です。
杉、ヒノキ、レッドシダーなど様々な樹種が使わることがあり、異なる色味や木目を楽しむことができます。
縦張り、横張り、鎧張り、大和張りなど、同じ素材でも張り方によって雰囲気がガラリと変わるので、貼り方を選ぶ楽しみもあります。
また、経年によって色や質感が変化する点も魅力で、だんだんと変わっていく外壁の雰囲気や、味わいの増す外観を長く楽しむことができます。
この変化することが人によってはデメリットと感じられることもあります。塗装を施すことで変化を小さく緩やかにすることができますが、雰囲気を保つためにはメンテナンス頻度が高くなってきます。逆に無塗装として積極的に変化を楽しむことができれば、イニシャルコストもランニングコストも抑えることが可能です。また、板張りは一枚一間の板を外すことができるので、破損したりした場合にはその部分だけを交換することも可能なので、その意味でメンテナンス性がよいと考えることができます。
防火性能に制限がある場合もありますが、設計や断面構成により多くの地域で対応可能です。
|焼杉(焼き杉板)の耐久性と風合い
木板張りの一種に、杉板の表面を焼いて炭化させた日本伝統の外壁材「焼杉」があります。
日本各地の歴史地区などで使われているのを見ることができるように、耐久性が非常に高く、表面の炭化層が紫外線や雨水から板を守り、長期間にわたってメンテナンスなしで美観を保つことが可能です。塗装が不要な点も大きな利点です。
焼杉ならではの深い黒の風合いは、和モダン建築や自然素材を活かした住宅にぴったりで、個性的で重厚な外観を演出します。
表面を焼くことで、薬剤を使うことなく、自然な防虫・防腐効果が備わっていますので、緑の多い山に近いエリアでは特に相性が良い素材です。
ただし、表面が炭化しているため施工時に粉が落ちやすい点や、板ごとの個体差が大きいことは理解が必要です。
風合いや耐久性、個性を重視した外壁におすすめです。
|窯業系サイディングと自然素材の違い
窯業系サイディングは、現代住宅で最も多く採用されている外壁材で、施工性やコスト面で優れています。
シンプル・木目・コンクリート柄など様々なデザインバリエーションがあること、イニシャルコストが小さいことが最大のポイントです。
デメリットしては、継ぎ目のコーキング処理が必ず発生するため、その性能維持のため、おおよそ10~15年でコーキングの打ち替えというメンテナンスが発生することです。
こちらは足場をたてて壁全体に対しての作業が高い頻度で発生するため、イニシャルコスト+ランニングコストのライフサイクルコストは大きくなることが多いです。
商品として流行りによっては廃番になることも多く、将来部分的に修理したい時に同じ材料が手に入らないということが発生しやすことも知っておくことが必要です。
また、工業製品であるため、変化は一方的な劣化になることが多く、自然な風合いや変化することによる味を楽しみたい方にはあまり向いていない素材と言えます。
対して自然素材の外壁は、本物の素材の素材感があること、メンテナンススパンが長いこと、経年変化による味が生まれるという特徴があります。
イニシャルコストは比較的大きくなりますが、ライフサイクルコストで比較すると有利な場合が多いです。
そして、長期間にわたって家族と共に変化していくことで、外観に味が生まれ、愛着が育まれることが一番の違いだと思います。
短期的な予算と施工効率を重視するか、長期的な価値と素材の魅力を重視するかの選択が大きな分かれ道です。
3. おすすめ素材3選と選び方ガイド
|おススメ素材① 「スーパー白洲 そとん壁W」
おススメの1つ目は塗壁材の「そとん壁」。こちらはシラス台地の火山灰を原料とした自然素材の外壁材です。高い断熱性・通気性を持ち、自然由来の機能性と美しさを兼ね備えています。
最大の魅力は塗装不要で長寿命という点です。表面は塗膜で覆われていないため色あせや剥がれが起きにくく、長期間にわたり美観を保つことが可能です。
また、防火性能にも優れ、国土交通省の防火認定を取得しており、防火・準防火地域でも使用可能です。健康や環境面にも配慮された素材です。
最も特徴的なのはその質感です。シラスの粒の大きな粒子で構成されているため、ゴツゴツとした土の質感が出るのが大きな魅力です。主に「かき落とし」と「スチロゴテ仕上」いう2つの仕上げ方があります。
・「かき落とし」は一度塗りつけた材料をある程度乾いたところで剣山のような器具でゴリゴリと落としていくことで、荒々しいボコボコした土の質感があらわれます。技量の高い左官さんによるかき落とし仕上では、表面はボコボコしていても、それが壁面に均一に広がり、静けさと凛とした雰囲気を感じることができます。たっぷりと塗りつけた材料を落としていくので、比較的手間代と材料費がアップしてしまう点が悩ましいところです。
・「スチロゴテ仕上」は左官さんの塗りつけるコテの軌跡をそのまま見せるような仕上げ方です。ランダムな表情があらわれ、自然な塗壁の仕上がりになるのが特徴です。左官さんの技量やセンスによって表情が全然違うものになるので、一点ものののような外壁が生まれます。
デメリットとしては、塗壁の中でも高価な材料であり、初期費用が高い点と、左官職人による専門的な施工が必要な点が挙げられます。技術力のある経験豊富な左官さんにお願いすることが成功のカギとなります。
それでも、メンテナンススパンの長さを考慮した長期的なコストメリットやを考慮すれば、非常に優れた外壁材といえ、メンテナンスの手間を減らしたい方に最適な外壁素材です。
デザイン面でも、和風住宅や和モダン建築との相性が抜群で、自然素材を活かした落ち着いた外観を演出でき、アースカラー系の色味が景観とよく調和します。
初期費用は高めですが、長期的なコストメリットと安心感を考えると、非常に価値の高い選択肢です。
|おススメ素材② 「杉板張り」
「杉板張り」は、木板張りの中でももっともポピュラーに使われる材料です。ヒノキなどに比べ流通量が多く、比較的小さなコストで採用できることが一番のメリットです。山にストックされている量も多いですし、将来の交換の際にも材料がなくて困るということが起きにくいのも利点です。
木の素材感を楽しみたいという方には最適で、柔らかな表情を活かしたデザインが良く似合います。特に山間部や自然豊かなエリアによく調和します。
張り方(縦張り・横張り・鎧張り・大和張り)によって印象が大きく変わり、モダンから和風まで幅広いデザインに対応可能です。
美しさを長く保つためには、日当たりや雨の当たり方に配慮した設計が必要です。軒の出を深くするなど、設計段階での工夫が求められます。塗装選びにより雰囲気も変わってきます、濃い色を付ければ落ち着いた雰囲気を出すことができますし、無塗装やクリア塗装を選ぶことで、木目の美しさや経年変化をより楽しむこともできます。
全面張りでなく部分的に取り入れることで、デザインのアクセントとしたりメンテナンス性のバランスを取ることも可能です。同じ自然素材である塗壁との相性はとても良いですね。
|おススメ素材③ 「焼杉」
最後のおすすめは「焼杉」です。
木を外壁に使いたいのだけれど、黒っぽく変化していくのはあんまり見たくないなぁ。塗装を繰り返すのもたいぎいなぁ。という人にはぜひこちらをお勧めします。
表面を焼くことでつくられた表情は変化が小さく、限りなくメンテナンススパンを長くしてくれます。
特に木の自然変化が大きくなる風雨や湿度が高い地域では、炭化層が虫やカビから木材を保護し、防腐・防虫効果を発揮するため、その特性が特に生かされることになります。
注意点として、触ると表面の炭が付くことがあります。特に白い服などに着くとなかなか大変なので、玄関周りなど人の往来の多い部分は「杉板張り」とするなどすることも選択肢のひとつです。
また施工時には炭の粉が舞い散りやすいため、市街地での採用の際には施工方法などを検討しておくなど、現場での丁寧な扱いが必要です。
とはいえ、その自然に生まれる黒色のフォルムや独特の質感は、他にはない焼杉ならではの魅力です。
耐火性と耐久性を兼ね備えた自然素材として、焼杉は特におすすめの一つです。
| コスト・メンテナンス・見た目のバランス比較
外壁材の選定では、初期コスト・メンテナンス性・デザインのバランスを考えることが重要です。
そとん壁は初期費用が高めですが、メンテナンス不要で長期間美観を保つことができ、長期的に見れば高コスパです。
杉板張りは中価格帯で、自然素材ならではの魅力がありますが、経年での変化が大きいので、変わっていく姿を楽しめる方向きです。
焼杉は初期費用とメンテナンスのバランスが非常に良く、個性的で落ち着いた外観を求める方に適しています。
素材の特徴を理解し、自分に合った外壁材を選ぶことが、満足度の高い家づくりにつながります。
| 自然素材は職人次第
自然素材の外壁を導入するには、高い技術力のある職人の力が不可欠です。そとん壁、杉板張り、焼杉のいずれも、専門的な知識と経験が求められます。
過去の施工実績があるかどうか、その施工がどんな出来か、可能ならば実物を体験して、経験深い業者さん・職人さんにお願いすることが、魅力的で高耐久な外壁を手に入れる一番大切な方法です。
最後に、施工後のアフターフォロー体制も含めて、安心して任せられるパートナー選びが外壁成功の決め手になります。
まとめ
|外壁選びは長期的視点がカギ
外壁は住まいの第一印象を決めるデザイン要素でありながら、住宅を自然から守る機能的なバリアでもあります。そのため、見た目の良さだけでなく、耐久性や地域適応性、メンテナンスのしやすさを総合的に判断することが重要です。
短期的なコストに注目しがちですが、長期的なライフサイクルコストを見据えた素材選びが、将来の安心や経済性に繋がります。
3つのおススメ素材。
そとん壁はメンテナンスの少なさと高い耐久性が魅力で、長期的にコストパフォーマンスが高い素材です。杉板張りは自然との調和とデザイン性があり、変化を楽しめる方におすすめです。焼杉は独特の風合いがあり、個性を重視する方にぴったりです。
いずれの素材も、信頼できる業者と相談しながら、住まいとライフスタイルに合わせて選ぶことが満足度の高い家づくりに繋がります。
以上、外壁選びの参考にしていただけると幸いです。