失敗しない間取りの考え方

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家を考える時、最初に気になるのがやはり間取りです。間取り、プラン、ゾーニング、さまざまに呼ばれることがありますが、部屋の大きさ、部屋と部屋、中と外のつながりを示したものです。この図面は「平面図」と呼ばれ、住宅を設計する上で最も重要で、もっともその住宅の質があらわれてくるものであると言われています。つまり、この「間取り」がうまくいくかどうかがいい家になるかどうかの分かれ道になるということです。そしてよい間取りにたどり着くためには様々な要素に目を向け一緒に考えていかなければならないのです。今回は間取りを考える上で忘れてはいけないポイントを紹介したいと思います。

 

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間取りは「間」取り ~最初に考えることは2つ

リビングが〇帖に個室が△帖で◇部屋、、、様々な希望があるかと思いますが、間取りのスタートは実はそこではありません。読んで字のごとく、間取りとは「間」をとっていくこと、つまりある大きさの枠の中から各部屋・各スペースを分配していくことなのです。建築基準法では敷地の大きさによって建物を建てられる上限が決められています(建ぺい率・容積率)ので、よほど敷地と予算に余裕があるケース以外では、まず建物全体の大きさが決まってきます。その大きさの中でそれぞれの部屋の大きさや位置を振り分けていくのです。これは限りある予算の中で、素材にお金をかけるのか、大きさにお金をかけるのか、家具や家電に使うのかといった予算の配分とまったく同じです。ですので希望をすべて満たすのが難しいケースもでてくると思います。そんな時、よい間取りにたどり着くために大事なことは優先順位を明確にしておくことです。みんなでいる空間を大事にするのか、プライバシーを重視するのか、趣味の空間が外せないのか、、、優先順位を明確にすることで大きな失敗を避けることができるはずです。

もう一つ考えておくべきなのは、10年後、20年後にその家をどう使うかということです。長い間には家族構成が変わってきます。こどもが育ち巣立って行ったあと、部屋はどうなるか、自分たちが年を重ねたあと、どういう暮らしができるか。①間取りの優先順位、②将来の住まい方、この2点をまずご家族でしっかりと話し合うことが大切です。

間取り計画のポイント ~すべてが間取りにつながる

間取りを決めるにはたくさんの要素が絡んできます。敷地の大きさ、周囲の環境、配置計画、使い勝手、コスト、温熱の要素、構造の要素、、、すべての要素が影響します。逆に言うと多くの要素をうまくまとめ消化した間取りが「よい間取り」ということになります。ここでは間取りを考えるポイントをまとめたいと思います。

□間取りと建物のカタチは表裏一体

先ほど述べたように、建物の大きさは敷地の大きさと予算からおおむね決まって来ます。ここに敷地の形状などの条件、そして車が何台必要かなどの家族の条件を加えていくとほぼほぼ間違いない大きさが見えてきます。では建物のカタチはどうやって決まるのでしょうか。そこで出てくるのが間取りです。先ほど間取りはある大きさの中で割り振っていくものと書きましたが、その大きさの枠のカタチ(つまり建物のカタチ)は自由です。なので間取りと建物のカタチは同時に考えなくてはならない表裏一体の関係となるのです。

この時キーになるのは周辺の環境条件です。隣の土地に建物が建っているのか、公園などのように開けているのか、そして方角がどうなっているか。できれば家族みんなの過ごす場所は陽の当たる心地よい場所に置きたいですよね。同じようにお風呂の場所はできるだけ表や道路から見えないところにしたいですよね。そう考えていくと、周りの状況をしっかりと確認することがとても大切なことがわかります。間取りを考える時、部屋の中だけを考えるのではなく、建物のカタチを含め、周辺環境との関係もしっかりと考えるべきなのです。

□家族関係は間取り関係

ワンルームマンションに住むとき、家族用マンションに住むとき、一戸建てに住むとき、多くは家族構成が変わることで住む場所を変えるというのが一般的な引っ越しの理由だと思います。住む場所が変わることによって家族の関係はどうなるでしょうか。部屋が増えることでそれぞれのプライバシーが保たれ、家族間には心の余裕が生まれるかもしれません。しかし一方で顔を合わせることが減り、親密な関係が損なわれてしまうかもしれません。特に子供にとっては人との関係をつくる第一の場所が「家」になりますので、ここでの家族との関係性が人格構成に少なからず影響を与えます。間取りにはそんな家族の距離感をどう考えるかも反映されます。

例えば家族の一緒に過ごす空間をどう整えるか。顔を寄せて集まりたいときもあれば、お互いをうっとうしく感じる時もあるのが当たり前です。そんな時でも同じ空間で無理なく過ごすことができれば家族関係もまるく納まるのではないでしょうか。そのためにはただ広ければいいというものでもありません。小さなデスクスペースや、コンパクトなタタミスペース、、、ひとつづきの空間の中に様々なちょっとした居場所をつくると、それぞれが自分の居場所で自由に過ごしながら、みんなが同じ空間で過ごす適当な距離感をつくることができます。

こども部屋をどう考えるか。これも家族関係に直結する大きな課題です。年頃の子供たちにはそれぞれ自分の部屋を持たせてあげたい。というのは誰もが思うことです。自分の持ち物の整理・管理など自立を促す面においてはとても効果があると思います。しかし、年ごろにもなると部屋に閉じこもって出てこないという話もよくある話です。ではこども部屋を何をする部屋と考えるのでしょうか?勉強?睡眠?もちろんひとりになりたいこともあると思います。勉強を考えると、小さいころには家族のいる場所で勉強することが今のスタンダードだと思いますし、兄弟のいる場合には勉強スペースをまとめるとよいケースもあります。そうなると寝る部屋。と考えるとそんなに大きなスペースは必要ないかもしれません。そして子どもは生まれて20年前後でおおむねこども部屋を巣立っていきます。そうなると後には荷物置場としてのこども部屋が残るばかりです。20年後に使わなくなった部屋が〇部屋というのは建物の運用を考えるともったいなく感じます。このことを踏まえると、こども部屋を小さく区切らず、家具などで仕切って使うという選択肢も出てきます。そうすると子供が巣立った後、大きな部屋として新しい役割を与えることが可能になります。

このように間取りを考えていくと、家族の関係・距離感をどう考えるかが大きなキーになってきます。家族の理想の関係を思い描いてみてください。

□あたたかい、寒いは間取りが決める!?

せっかく新しい家をたてるのですから、あたたかい家にしたいですよね。高気密・高断熱のきちんとした家なら1,2台のエアコンで家中をあたたかくすることができます。しかし、この暖かくなり具合は間取りによって大きく変わってくるのです。もちろん性能による差が大きいのですが、温熱性能が一緒の場合、開放的な間取りであるかどうかで大きく冷暖房の結果が変わってきます。開放的な間取りであれば、熱が移動しやすいため早く熱が動き、均一な温度になってくれます。またどの部屋にいても温度差が少なく不快に感じること(あつっ、さむっ)も少なくなります。少ないエアコンで暑い寒いを克服しようとすると自然とエアコンの設置場所は共有部分、つまり1階ならリビングやダイニング、2階は廊下などになることが多いため、特に2Fでは個室がクローズになっていると各部屋に熱が伝わりにくくなってしまいます。また床下エアコンという、基礎断熱と組み合わせて床下の基礎の中に暖かい空気を送り床暖房のように家を暖める方法を使う場合には、間取りによって床下の基礎の配置がかわってくるため、さらに影響がでてくることになります。

間取りを考える時は、暖房冷房計画も一緒に考えないといけないのですね。

☐収納と部屋どっちが優先?

家に住み始めた後、よく出てくるのが「収納が足りない!」というお話。本当によく耳にします。かといって収納ばかり増やして住む場所が狭くなったというのでは本末転倒です。建物の大きさには限界があるので、収納のスペースと部屋としての空間はバランスをとっていく必要があります。そうなった時、自分はどういう収納のカタチが一番使いやすいのか、を考えてみてください。押入のような大きな空間がいいのか、たくさんの棚がある形がいいのか、ハンガーパイプのように引っかけるのがいいのか、納戸などのように部屋ごと収納がいいのか、、、この形式によって随分と収納のスペースの取り方が変わってきます。ほかの部屋の中に組み込めるのか、独立したスペースが必要なのかを明らかにすることで、他の部屋との間取りも効率よく行うことができます。家の中に余計なものが出てこず、片付いているのはとても気持ちの良いものです。そのためには自分にあった収納を計画することが大切なのです。

ちなみに間取りの際、収納場所の確保を忘れがちなものが掃除機とゴミ箱です。掃除機は取り出す頻度も高くかといってリビングに残っていると非常に気になるものです。いつもる場所から近いところに居場所をつくってやりたいものです。またコードレスやルンバなどは収納場所もコンセントの位置も異なるため、忘れずに計画に組み込んでおかないと困る可能性が高いです。ゴミ箱については特にキッチン。奥様のこだわりのキッチンが結局ゴミ箱の置き場がない!なんてことになると目も当てられません。こちらもお忘れないようお気を付けください。

まとめ

間取りの注意点をいくつか紹介させていただきましたが、細かいポイントは実はまだまだたくさんあります。普通の人がこれだけたくさんの要素を整理し、「いい間取り」にまとめるのはとても難しいと思います。ですので、そこはプロにしっかりと相談してもらえればと思います。相談するときにはここで書いたポイントにぜひ留意してもらって、自分たちが大事にしたいことはこれなんです、としっかりとアピールして下さい。設計士さんは住宅のプロフェッショナル。きっとあなたの意をくんで「よく考えられた間取り」をつくり上げてくれるはずです。もしその間取りに疑問があれば、遠慮せずに投げかけてください。話し合い、お互いに考えを理解していくことで間取りはだんだん良くなっていくはずです。そうやって少しずつ本当に「いい間取り」に図面も自分も近づいていくのです。

このコラムが皆さんの参考になれば幸いです。それでは楽しい家づくりを!

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