「夢中な建築」 01_【クルチェット邸】

WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -

住宅も建築のジャンルのひとつ。
僕が建築にたずさわる仕事をはじめたのも、「建築」の面白しさに触れたから。
「家づくり」という仕事を続けているのも、その面白さを住まい手にちょっとずつでもおすそ分けできたらと思っているからです。

今回から、「夢中な建築」というタイトルで、僕の好きな建築と、その魅力をちょっとずつ紹介していきたいと思います。
建築の面白さを少しでも感じてもらって、家づくりにちょっとでも興味を持ってもらえればと思います。

 

第一回目は住宅から。
現代建築の巨匠「ル・コルビュジェ」の【クルチェット邸】を紹介したいと思います。
日本の現代住宅作家にも、伊礼智さん、堀部安嗣さん、中村好文さん、横内敏人さん、、、たくさんの大好きな建築家の方々がいらっしゃいますが、誰を選んでも角が立ちそう(笑)なので、大巨匠の作品から選ばせていただきました。

「ル・コルビュジェ」はご存じの方も多いと思いますが、フランスの建築家で、「住宅は住む機械である」「近代建築の5原則」といった、近代の住宅の本質を上手に言語化して、普及を進めた人物です。多くは石積だったヨーロッパの建築に、コンクリートという素材を持ち込むことで、自由な平面計画や、大きな開口(横長の窓)による明るい空間や、ピロティ、屋上庭園といった現代のモダン住宅の基本をつくった人と言えるでしょう。
僕にとっても大学の最初の課題で【クック邸】という住宅の図面を引き模型を作ったことで、とても印象の深い人物です。

106件と言われる多くの住宅作品を残したコルビュジェですが、今回選んだ【クルチェット邸】はその中で唯一、南米に建てられた住宅です。コルビュジェは現地に足を運んでいないと言われており、想像するに、写真や地図から建物のあたりをつけ、図面を描き、多分現地のコルビュジェを崇拝する建築家たちによって完成させられたのではないでしょうか。いやはや、「現場百遍」、何度も現地を見ないとなかなか図面を引けない僕にとっては神業のように感じます。そして、完成した建物が現地の環境に寸分たがわずぴったりと納まっているところが巨匠たるゆえんでしょう。

 

このお家は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの近郊ラ・プラタという住宅街の中に建っています。周りは住宅に囲われていて、真っ白い建物がひときわ目を引きます。(コルビュジェの住宅は真っ白なものが多いです)ここで注目したいのがファサードの格子。これは「ブリーズソレイユ」と呼ばれる【日除け】です。温暖で日射が強い南米の気候に対応する工夫なんですね。その環境に対する工夫が、建物の「顔」として無理なく無駄なくデザインされているのが素晴らしいですよね。
1Fはオープンなポーチ的空間、2Fは室内、3Fは屋上テラスという、中と外を組み合わせた構成が、もうこれだけで気持ち良い内部空間を想像させてくれます。1Fのポーチ的空間に入る玄関も独立した感じで、とっても現代的ですよね。3Fには屋上庭園で緑も植えてあって、街中でも自然を感じられるつくりに、、、と言いたいところですが、実は違うんです。

 

 

実は1Fから屋根の上まで大木が家の中を貫いているんです!
このお家はこの木を中心に構成されていて、木の周りをぐるりと回るようにスロープと階段が巡らされており、上下する動きに合わせて変わっていく景色「シークエンス」を楽しむことができるようになっています。また、各部屋からも木の枝ぶりを眺めることができ、同じ木でも部屋ごとに違った角度から見ることで、少しずつ違った表情を楽しむことができるのもポイントのひとつです。

 

 

 

内部と外部が立体的に組み合わされていて、中に入ったり、外に出たり、どこからでも中庭のメインツリーが見え、周りの緑も借景として取り込んでいるので、中と外の感覚があいまいになってきます。こんな風に中と外をつないでいく方法もあるんですね。その場所の環境を活かしながら、心地よい暮らしを実現する、本当に良い見本だと思います。いつか、「広島のクルチェット邸」をつくってみたいですね。

いや~、建築って面白いですね。

 

それではまた次回、「夢中な建築」でお会いしましょう。

 

written by atsushi tamura

 

 

この記事を書いている人 - WRITER -

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 株式会社田村建設 , 2024 All Rights Reserved.