縁側の魅力。~外と中の間の場所~

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古い民家を思い浮かべる時、まず思いつくのが、瓦の屋根と、大きな窓の並んだ縁側ではないでしょうか。
ポカポカと陽の当たる縁側は、とても風情を感じられますよね。
日本では、古来から機能的・情緒的なものとして家づくりに縁側を取り入れてきました。
マンションやアパートでは作ることのできない魅力的な空間として、現在でも縁側を取り入れるケースは少なくありません。
今回は、縁側の魅力や役割、現代的な縁側について考えてみたいと思います。

Contents

□縁側とは

縁側の歴史は古く、平安時代までさかのぼります。寝殿造といわれる「田の字型プラン」の建物の外側に、雨と陽射しを遮り部屋を守るための大きな庇をかけたことが起源となっており、その下の空間に床を貼ったことで縁側が生まれたようです。ですので、最初期の縁側は建物(部屋)の外側にある雨のかかる「濡れ縁」と呼ばれるものでした。その後、建具の発達によって縁側の外に建具を立てるようになり、「くれ縁(内縁)」と呼ばれる私たちがよく目にする家の中にある縁側のカタチが生まれました。

成り立ちを見ると分るように、縁側は機能から生まれたとても合理的な空間だったんですね。今では+αの空間となっていますが、当時はシェルターとしての必要性から生まれています。

縁側は主に「田の字型プラン」の部屋から部屋へ間接的に移動するための通路として使われました。大河ドラマなんかでよく縁側を歩いていくシーンをみかけますよね。ここで庭を眺めながら話をしたり、庭で遊ぶ子供たちをみつめたりするシーンもよく見られます。この使い方は現在まで継承されている縁側の魅力的な部分ですね。

時代が進み、田の字型が現代的な間取りに変遷していくにつれ、中廊下が生まれ、縁側の移動空間としての役割は小さくなっていきました。その代わり、内部と外部との中間領域として、プライバシーを保つ、陽射しを調整する、外から出入りする場、来客とコミュニケーションをとる場、として使われるようになりました。

現代ではさらにその用途を広げ、様々な使い方のできるフレキシブルな空間として使われています。

 

縁側の種類

縁側にはその性質によっていくつかの種類があります。

・格式高い和室に併設する縁側(内縁)
本格的な和室や仏間では縁側を設けることが正式なつくりかたと考えられています。
真壁、塗壁など伝統的なつくりかたでつくられることが多く、普段使いとはちょっと離れた場所として設えられます。

・内縁
建物の中にある縁側。
雨がかからず、部屋と一体となって使える空間。
中と外の出入り口として、仏間ではお坊さんの出入り口としても使われます。

・濡れ縁
建物の外にある縁側。
雨にかかる場所であることが特徴。よくウッドデッキと呼ばれることもあります。
お庭と一緒になって使うことがメインになります。

使い方や目的によって設えを使い分けていくことが、うまく活用するポイントです。

 

縁側の魅力 メリット/デメリット

現代では特別に和室を設けるのでなければ、縁側は+アルファの空間になることがほとんどです。
狭小地での面積規制や価格上昇の中では、なかなか余分なスペースを確保することは難しくなっています。
それでも縁側には捨てがたい魅力があります。

縁側だからといって、畳の部屋にくっついてないといけない。
などと考えずに、もっと広く考えてみると現代の住まいでも縁側が生きてきます。
設えによってはインナーバルコニーや、サンルームと呼ばれることもあるかもしれませんが、【外と中の間の場所】としてとらえると、より積極的に縁側的空間を活用していけるのではないかと思います。

メリット/デメリットをよく理解して、小さくても素敵な縁側を設けたいものです。

 

□縁側の魅力

やはり外と中の間の場所であることが、縁側の一番の魅力です。
暖かい日差しの入る縁側で、日向ぼっこしたり、お昼寝したり。
窓を開けて腰かけて、お庭を眺めてすごしたり。
家の中で一番自然の恵みを愉しむことができる場所になりますよね。
その恵みを活かして、布団の干し場だったり、雨の日の洗濯干し場になったり。
子供の遊び場や、お父さんの趣味スペースになったり。
活躍の機会は様々です。
逆にフレキシブルにいろいろな使い方をできるところも大きな魅力と言えるでしょう。

 

□縁側のメリット/デメリット

様々な使い方のほかにも、ならではの特徴があります。
いくつかメリット/デメリットをまとめてみます。

□メリット

+①プライバシー性能
縁側があることで、部屋と外部との間に物理的な距離が空き、自然と緩衝空間となってくれます。
縁側と部屋との間に障子をたてれば、柔らかい光を取り込みながら外部からの視線を防いだりとプライバシー性を高める効果があります。
開けば縁側を内部の部屋と一体として広く使うことも可能です。

+②省エネ効果
縁側を設けることで、しっかりと光を取り込み、昼間の明るさを確保したり、冬場の太陽熱を蓄えることで、暖房設備の負担を軽減したりと、省エネの効果をもたらします。床の仕上げにタイルやレンガなどの蓄熱体を採用すると、よりその効果は大きくなります。

+③積極的に外を楽しむ
濡れ縁は、庭いじりなど外遊びを楽しみたい人には、ベンチとしても最適です。
広い濡れ縁=ウッドデッキなら、外ご飯も楽しめます。
お家でアウトドアを楽しむには最適なしつらえです。

□デメリット

-①+αのスペースが必要
最初にもあげたように、+αのスペースが必要です。
面積規制の厳しい場合には、他のスペースとのトレードオフが必要です。
より多機能を持たせるように考えることが必要になります。

-②庭の手入れが必要
メリットでもあげましたが、お庭と一体になって魅力が大きくなるのが縁側の特徴です。
魅力を豊かに保つためには、お庭の手入れが欠かせません。
庭いじりを楽しんで行う工夫も必要かもしれません。

 

□縁側づくりでの注意点

まず、なぜ縁側が欲しいのか、どういった利用をするのか家族でイメージを共有しておくことが必要です。
せっかく貴重なスペースを使うのですから、後で全然使わなかった。なんてことになるともったいないですよね。

新築住宅を建てる際には、早い時点で設計士さんにご自身やご家族の希望をしっかりと伝えることが大切です。
内部とのつながり方、アプローチとの関係、敷地外からの見え方など、プランニング上で大きなポイントになってきます。
最初の時点から計画しておけば、防犯性やプライバシー性も加味した、より使いやすい縁側になるはずです。

 

□まとめ

お庭のある縁側、いいですよね。
和室にくっついているもの。だけではなく、ウッドデッキなども縁側の一種だと考えて、色々な使い方を想像してみると、素敵な「縁側」が生まれると思います。
濡れ縁と内縁、どちらが自分たちの想う暮らし方にピッタリくるか、ぜひ一度考えてみて下さいね。

 

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