解説|換気について ~第1種換気、第3種換気どっちがいいの?

「なんとなく息苦しい」「窓を開けているのに空気がこもる気がする」——そんな風に感じたことはありませんか?
現代の住宅は気密性が高まる一方で、「正しい換気の知識」がなければ、せっかくの快適な住まいも健康リスクの温床になりかねません。
特に家を新築・リフォームする際、「第1種換気」と「第3種換気」のどちらを選ぶべきかで迷う方が非常に多くいらっしゃいます。
「どちらが良いか」を判断するには、単なる機能比較だけでなく、住宅性能や家族構成、地域性など、さまざまな要素を踏まえる必要があります。
この記事では、住宅性能に精通した専門家が、換気の基本から最新事情、そして各方式のメリット・デメリットまでを徹底解説。
読むだけで“我が家に最適な換気方式”が見えてくる内容に仕上げています。
「なんとなく」ではなく、「納得して」選べる換気方式の知識を身につけることで、快適・安心・健康な暮らしを実現する第一歩が踏み出せます。
最終的な答えは、家族にとってベストな空気の流れを考えること。
この記事を通じて、あなたの暮らしにぴったりの「空気のデザイン」を一緒に見つけましょう。
・住宅の換気方式は、「性能と快適性を重視するなら第1種換気」、「コストや導入の手軽さを重視するなら第3種換気」が適している。
・換気の効果を最大限に活かすには、住宅の断熱・気密性能に合った方式を選ぶことが重要。
・最適な換気を選ぶには、住まい方や家族構成、地域環境などを考慮し、設計初期段階から計画を立てることが不可欠。
Contents
1. 換気とは何か?住宅における役割と種類
| なぜ換気が重要なのか?
現代の住宅は高気密・高断熱化が進み、外部との空気のやり取りが非常に少なくなっています。これにより、室内に湿気や有害物質がこもりやすくなり、空気環境の悪化が健康被害の原因になるケースも少なくありません。
換気の役割は、汚れた空気を外に出し、新鮮な空気を取り入れること。それによりCO2濃度の上昇やカビの発生、ホルムアルデヒドなどの化学物質の滞留を防ぐことで、室内の空気を新鮮に保つことです。アレルギー体質の方や小さな子どもがいる家庭では、特に換気が生活の質を大きく左右する要素となります。
また、近年では新型コロナウイルスの影響もあり、感染症対策としても換気の重要性が再認識されています。人が密集する空間で空気の流れがないと、ウイルスの飛沫やエアロゾルが滞留し、感染リスクが高まることが分かっています。
換気は健康だけでなく、住宅そのものを長持ちさせるためにも大切です。結露や湿気によって木材や断熱材が劣化し、住宅の耐久性が損なわれるのを防ぐには、適切な換気が欠かせません。
このように「換気」は、人の健康と住宅の健康を同時に守るために必要不可欠な機能なのです。
| 換気の3つの基本方式とは?
住宅における換気方式には主に「第1種換気」「第2種換気」「第3種換気」の3種類があります。その違いは、「給気」と「排気」を機械的に行うか、自然に行うかにあります。
第1種換気は、給気と排気の両方を機械で行う方式で、外気の温度や湿度の影響を受けにくく、空気の流れをコントロールしやすいのが特徴です。
第2種換気は、給気のみを機械で行い、排気は自然に任せる方式。病院やクリーンルームなど、常に清浄な空気を保ちたい空間で使用される方法で、一般住宅での採用は少数です。
第3種換気は、排気のみを機械で行い、給気は自然に任せる方式です。構造がシンプルでコストが安く、広く採用されている一般的な方式です。
これら3つの方式のうち、住宅において主に選択肢となるのは第1種と第3種であり、設計の自由度やコスト、快適性の観点から慎重に選ぶ必要があります。
| 高気密住宅と換気の関係
住宅の「気密性」とは、外気と室内の空気がどれだけ遮断されているかを示す性能です。高気密住宅では、窓やドアの隙間が非常に少ないため、自然に空気が出入りすることがほとんどありません。
これは、室温の安定化や省エネに大きなメリットがある一方で、換気が不足すると空気がよどんでしまうというデメリットも抱えています。特に、キッチンや浴室など湿気やニオイが発生しやすい場所では、機械換気による計画的な空気の入れ替えが必要です。
また、高気密住宅では気圧差による逆流や結露リスクも高まりやすく、単なる換気口では不十分なケースも見受けられます。これらを防ぐためにも、気密性に見合った換気方式の選定が求められるのです。
さらに、断熱性能が高い家になると、外気から受ける熱損失よりも換気による熱損失の割合が大きくなるため、換気設備によって断熱性能が左右されるようになります。熱交換機能のある換気設備を選ぶことでさらに安定した室温の維持と快適性を両立できます。
このように、高気密・高断熱住宅においては換気設計が建物の性能に直結する重要な要素となっているのです。
| 換気不足が引き起こすトラブル
換気不足が引き起こす問題は多岐にわたります。代表的なものは湿気による結露と、それに起因するカビやダニの繁殖です。これらはアレルギーや喘息など、健康被害の原因となるリスクがあります。
また、人の呼気に含まれる二酸化炭素(CO2)の蓄積も深刻な問題です。CO2濃度が高まると集中力が低下し、頭痛や倦怠感を感じることがあります。特に、在宅ワークや子どもの学習環境には重大な影響を及ぼします。
さらに、新築やリフォーム後の住宅では、建材から放出されるホルムアルデヒドなどの化学物質が室内にとどまりやすく、「シックハウス症候群」のリスクも無視できません。
このように、換気不足は住まいの快適性だけでなく、健康や安全にも深刻な影響を及ぼすため、計画的な換気設計が不可欠です。
| 24時間換気の義務化とその背景
日本では2003年に建築基準法が改正され、すべての新築住宅に「24時間換気システム」の設置が義務化されました。これは、シックハウス症候群を防ぐ目的で導入されたもので、住まいの安全性を確保するための国の施策です。
これにより、現在の新築住宅では必ずどれかの換気方式を取り入れて、常時換気が可能な設計が求められています。この制度により、多くの住宅で「第1種」または「第3種」換気が導入されるようになりました。
義務化によって換気への意識は高まりましたが、実際に正しく運用されていないケースも多いのが現状です。換気口をふさいでしまったり、フィルターを掃除せずに使い続けるなど、適切な管理がなければ換気システムはその機能を発揮できません。
これからの家づくりでは、単に制度を満たすだけでなく、暮らしに合った換気設計をすることが、より快適な住環境の実現につながります。
2. 第1種換気とは何か?その仕組みとメリット
| 給気と排気を機械でコントロール
第1種換気は、給気も排気も機械で制御する方式です。これは、外部からの新鮮な空気を機械(ファン)で取り入れ、同時に室内の空気を別のファンで排出する構造を持っています。
基本的にダクト式であり、外部から採り入れた新鮮空気をダクトによって各部屋に送り、また別のダクトで各部屋から汚れた空気を排気する方式です。この方式では、室内の気圧や空気の流れを正確にコントロールできるため、外気温や湿度の影響を受けにくく、常に一定の空気環境を保つことが可能です。
また、高気密住宅との相性が非常に良く、気圧差によるトラブルや空気の逆流を防ぐことができます。特に、室内全体の空気の流れを設計通りに計画できる点は、住宅全体の快適性を左右します。
給気口にはフィルターを設けることで花粉やホコリ、PM2.5などの微粒子も遮断でき、アレルゲン対策としても有効です。
このように第1種換気は、より高品質な室内環境を求める住宅で導入される高度な換気方式です。
| 熱交換器による省エネ効果
第1種換気の大きな特徴のひとつが熱交換機能です。給気と排気の空気が交差する部分に「熱交換器」を設置することで、取り込んだ外気に排出する室内の温度を伝え、室内に流入する空気の室温との差を低減することで、換気による室温の変化を最小限に抑えます。
冬であれば、暖かい排気の熱を利用して、外の冷たい空気をあらかじめ温めて取り込むことができ、冷暖房の効率が格段に上がります。夏は逆に冷気を保持したまま換気が可能です。
これにより、冷暖房の消費エネルギーを削減でき、省エネ性に優れるというメリットがあります。ZEHや高性能住宅との相性も非常に良く、光熱費削減を目指す家庭にとっては大きな利点です。
ただし、熱交換器のフィルターや内部の清掃は定期的に行う必要があり、メンテナンスの手間がかかる点も理解しておく必要があります。
| アレルギー対策としての効果
第1種換気は、アレルギー対策としても非常に効果的です。外気の取り込み時にフィルターを通すため、花粉や黄砂、PM2.5などの有害物質を室内に持ち込まずに済む構造になっています。
特に、換気扇によって強制的に空気をコントロールするため、隙間からの不規則な侵入を防げる点は、アレルギーの原因物質を最小限にする大きなポイントです。
また、高性能なフィルターを使用すれば、ウイルスや微細な粉じんにも対応可能なため、免疫力の弱い子どもや高齢者のいる家庭でも安心して暮らすことができます。
こうした特性は、健康的な住まいを目指す自然志向の家づくりにおいて欠かせない要素です。
| 導入コストとメンテナンスの注意点
高性能な第1種換気には、多くのメリットがある一方で、導入コストが高いという現実的な課題もあります。熱交換器を含む本体設備費、ダクト設置、施工費用など、初期費用が高額になる傾向があります。
また、ダクトの清掃やフィルターの交換、熱交換素子のメンテナンスなど、日常的な手入れが必要です。これを怠ると、空気の質が低下し、むしろ健康被害の原因にもなりかねません。
定期的な点検を業者に依頼する必要もあるため、ランニングコストも見込んでおくことが重要です。
また、第1種換気設備の適性な機能を得るためには、高い気密性が欠かせません。一般的にC値<0.5 の気密性能が必要であると言われています。せっかくコストをかけて第1種換気を採用しても、気密性の低さのためにその性能を活かせなければもったいないですよね。採用には気密性能とセットで判断する必要があります。
とはいえ、これらの手間を上回る快適性と健康面でのメリットがあるため、本気で良質な住環境を求める方にとっては十分に投資価値のある換気方式です
3. 第3種換気とは?特徴と注意点
| 自然給気・機械排気のシンプルな構造
第3種換気は、排気を機械で行い、給気は自然に任せるという構造の換気方式です。換気扇などの機械を使って室内の空気を外に排出し、外気は壁や窓に設けられた給気口から自然に取り入れる仕組みです。
そのため、構造が非常にシンプルで、施工の自由度が高くコストも抑えやすいという特徴があります。一般住宅や集合住宅の多くで採用されており、もっとも普及している換気方式の一つです。
特に、導入が容易で、設置工事も比較的短期間で完了する点は、リフォームや建て替え時にも大きなメリットとなります。
非ダクト式とダクト式、さらに熱交換型のものもあり、種類が豊富です。非ダクト式ではトイレや脱衣室などに設けられた換気扇から空気を排出します。建物全体の空気を緩やかに動かして空気を入れ替えるイメージですので、部屋の扉にアンダーカットをほどこすなど、へやをまたいで空気が動くような工夫が必要となります。ダクト式では第一種換気と同様にダクトによって各室から空気を引っ張って排気することができます。熱交換型のものは熱交素子を内蔵する換気機器を使用するものですが、第一種換気のシステムに比べ大変コンパクトになっており、交換も容易です。な反面、各部屋に設置する必要があるため、比較的コストが大きくなる
| 導入コストと施工性の良さ
第3種換気の魅力はなんといっても導入コストの低さです。機械が必要なのは排気側のみで、給気側にはフィルター付きの自然給気口を設けるだけで済むため、設備費用や施工費用が抑えられます。
さらに、非ダクト式のものは配管(ダクト)工事の手間が少なくなり、建物の階高(=高さ)を抑えらえられる等、建築時の設計自由度も高く、建築全体のコストを下げたい住宅に向いています。
また、部品交換や点検も簡単で、長期的に見たメンテナンスコストも抑えられる傾向にあります。
ただし、熱交換型のものはコンパクトながらも各室に設ける必要があったりと数が多くなるため、コストは大きくなる傾向になります。
| 外気の影響を受けやすいデメリット
第3種換気にはデメリットもあります。自然給気のため、外気温や湿度に影響されやすく、室温の安定性に欠けるという点です。強風の際には逆流してしまうという恐れもあります。冬場は冷気がそのまま入ってきてしまい、設置の場所によっては冷気を感じてしまうことがあります。ですので第三種換気の場合には、給気口の配置計画が最も重要な設計課題となり、エアコンの給気口付近に設け、室温と温度差のある取り込み空気をエアコンに吸わせ、適切な温度に変換して室内に配るなどの工夫が必要です。
また、給気口に十分なフィルター機能がないと、花粉やホコリが室内に入りやすいという欠点もあります。アレルギーや気密性にこだわる家庭では、フィルター性能の高い製品を選ぶことが重要です。
給気と排気のバランスも崩れやすく、部屋によって空気の流れが偏る可能性もある[/keikou]ため、なおさら配置計画を丁寧に行う必要があります。
| メンテナンスの手軽さ
第3種換気は、構造がシンプルな分、メンテナンスがしやすいという利点があります。排気ファンの清掃や交換も簡単で、部品点数が少ないため管理の手間が少ないのが特徴です。
フィルター交換などもユーザー自身が行えるケースが多く、業者を呼ばなくてもメンテナンスが完了する点は、忙しい家庭にとってありがたいポイントです。
ただし、定期的に給気口のフィルター掃除や交換を怠ると、外気がそのまま入ってくることになるため、簡単とはいえこまめな手入れは必要です。
| 高気密住宅との相性の課題
近年増えている高気密住宅では、第3種換気の導入に注意が必要です。自然給気が前提の第3種換気は、気密性が高すぎると空気がスムーズに入ってこない場合があります。
これにより、換気が十分に行われず、室内の空気が滞留してしまうリスクもあります。結果としてカビや湿気のトラブル、結露などにつながる可能性があるのです。
また、気圧差が大きいと、ドアの開閉が重くなる・バタンと閉まるなどの生活上の不便さも生じやすくなります。
このような住宅では、通気経路の工夫や補助ファンの設置などを通じて、気密と換気のバランスを取ることが求められます。
4. 第1種換気と第3種換気の比較と選び方
| 性能・快適性・空気質で比べる
第1種換気は空気の質を安定的に保つ点で非常に優れており、室内の温度と湿度を外気の影響から守りながら換気を行えます。これにより、冷暖房効率の向上やアレルゲンの侵入抑制に貢献します。
一方、第3種換気は自然給気に頼るため、季節や天候によって空気の質が変化しやすくなります。特に冬場は冷気の侵入による室温の低下が課題となります。
したがって、性能と快適性を重視するなら第1種換気が有利ですが、建築コストや使用目的によっては第3種換気でも十分に対応可能です。
| コスト・初期投資・ランニングコスト
導入にかかるコストは、第1種換気が高めである一方、第3種換気は比較的リーズナブルです。特に、初期投資や設備のメンテナンスコストを抑えたい場合は第3種換気が選ばれやすい傾向にあります。
ただし、第1種換気では熱交換により冷暖房の消費エネルギーが抑えられるため、長期的にはランニングコストで差がつく場合もあります。
費用面の総合的な判断には、導入コストと維持費のバランスを見極めることが重要です。
| メンテナンス・耐久性・管理のしやすさ
第3種換気は構造がシンプルであり、排気ファンや給気口の掃除が自分でしやすいというメリットがあります。メンテナンスも容易で、故障時の対応も比較的簡単です。
これに対して第1種換気は、ダクトシステムや熱交換器の定期的な清掃や部品交換が必要で、専門的な知識を要する場面もあります。特に湿気の多い場所では、カビの発生を防ぐための定期点検が不可欠です。
管理の手軽さを優先するなら第3種換気、長期間にわたる性能維持を重視するなら第1種換気がおすすめです。
| 導入のしやすさ・施工の自由度
第3種換気は、ダクト配管が不要なケースも多く、施工が非常に簡単です。特に既存住宅への後付けやリフォームにおいては、施工の自由度が高く、間取りの制限を受けにくいという利点があります。
第1種換気は、給気・排気ともにダクトを通す必要があるため、設計段階から換気計画を組み込んでおくことが重要です。施工には専門性が求められ、工事期間や費用が増えることもあります。
導入のタイミングや住宅の構造によって、どちらが適しているかが変わる点に留意が必要です。
| どちらを選ぶべき?判断のポイント
結論として、住宅の断熱性能・気密性・ライフスタイルによって最適な換気方式は異なります。寒冷地や高性能住宅には第1種換気がマッチし、温暖地や費用重視の住宅には第3種換気が有効です。
また、健康志向・静音性・アレルギー対策を重視する方は第1種換気を選ぶ傾向があります。一方で、シンプルで扱いやすいシステムを求める方は、第3種換気を選ぶケースが増えています。
いずれを選ぶにしても、設計初期からきちんと換気計画を立てることが後悔しない家づくりの鍵です。信頼できる専門家と相談しながら、自身の住まい方に合ったシステムを選びましょう。
まとめ
| 換気方式の理解が快適な暮らしを支える
本記事では、住宅における換気の重要性から、第1種・第3種換気の構造・特徴・利点・注意点、そして選び方までを解説しました。換気は目に見えない快適さや健康、安全に直結する要素でありながら、軽視されがちな分野です。しかし、室内の空気環境は住まいの品質を左右する大きなポイントです。
第1種換気は熱交換による快適な空気環境や省エネ性、第3種換気は導入しやすさやメンテナンス性の高さが魅力です。どちらも一長一短があるため、住宅の性能・立地・予算・ライフスタイルに応じて選ぶことが何よりも重要です。
| 自分の暮らしに合った「空気」を選ぶ
住宅の換気方式は一度選ぶと簡単には変更できないため、設計段階から十分に情報を集めて検討することが大切です。特にこれからの住宅は高気密・高断熱が基本となるため、気密性能に見合った換気方式の選定が、快適な暮らしを左右します。
「静かに、効率よく、空気を動かす」ためには、その仕組みと住宅の相性を理解することが不可欠です。今後の健康的で持続可能な住まいづくりには、換気計画の知識が欠かせません。
ぜひ今回の記事を参考に、ご自宅の新築・リフォーム・リノベーションの際にご自身の理想に合った換気システムを選択してください。それが、安心・安全で心地よい毎日の暮らしへの第一歩となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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