田舎暮らし、古民家に住む -メリットとデメリット-
暑い季節になりましたね。こうなると涼しい避暑地に逃げ出したくなるものですが、コロナ時代の昨今、なかなかお出かけも思うようにいきませんよね。そこで田舎暮らしがもう一度見直されてきています。自然に囲まれた古民家での暮らしは、とても魅力的なものです。しかし、都会から離れた田舎での暮らしには、いいところもそうでないところも両方があります。魅力も大きいですが、あなたにとって致命的な欠点があるかもしれません。十分メリット・デメリットを理解して、田舎暮らし、古民家での生活を楽しんでもらいたいと思います。ご興味のある方はぜひぜひ、この機会に検討してみて下さい。
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理想の田舎
皆さんがぱっと思いつく理想的な田舎というのは多分、飛騨高山の「白川郷」に代表されるような【集落】ではないかと思います。町からは遠く離れていて、山に囲まれた中に数十戸が集まって住んでいて、住人たちが仲良く協力しながら自然と共に暮らしている。。。僕も以前一度だけ行ったことがありますが、初めて訪れるのにとても懐かしいような、懐かしい時代をここだけポッと持ってきたような、小川沿いの小道を歩くだけでほっこりするような、本当に心地よいところでした。しかし、現実にはそんな理想的な【集落】はなかなかないと思います。だから逆に白川郷が観光地としてとても人気があるのですね。
街中で住宅を計画するときも一緒ですが、理想を完璧に体現するような敷地(土地)を見つけるのはなかなか難しいものです。自分が田舎に何を求めているのかよく考えてみることが大切です。山や海を眺める風景が欲しいのか、自然と田園に囲まれた雰囲気が好きなのか、野菜やお米を育てる環境が欲しいのか、とにかく街や人から距離をとりたいのか。様々にあると思いますし、ひとつではないこともあると思いますが、ここを明確にしておくと納得の暮らしが見つけやすいのではないかと思います。
田舎レベル – 田舎を分類する(広島の場合)
田舎レベル-ダイアグラム
田舎と一言にいっても人里離れた山の中から、街中から少し離れた田んぼの広がるエリアまでかなりバリエーションがあります。おおむね街からの距離でその特徴が決まってくるのですが、どのくらいの田舎を理想としているのか、一度考えてみましょう。
田舎レベル
田舎度1 |
住宅地のはずれに位置し、小さな田畑が広がる。 そのすぐ向こうに隣家がある。 コンビニがギリギリ行ける範囲にある。 街までは公共交通機関でもアクセスできる。 |
田舎度2 |
山と川、田畑に囲まれている。 古民家が多く、隣家までは少し歩く。 ポツンポツンとあるお店までは車で移動。 車で通勤できる範囲。 |
田舎度3 |
人里離れた山の中。 民家はまばらでギリギリ歩いて行ける。 買い物は街まで車でおでかけ。 街まで毎日通勤はけっこう大変。 |
田舎度4 |
ポツンと一軒家レベル。 車に乗らないと隣家にもいけない。 |
どうでしょうか、こうして分類してみると結構田舎レベルによって差がありあますよね。街からの距離、周りの民家との距離、生活圏の距離感はまず意識する必要があると思います。そう考えるとあなたの状況によって適する田舎レベルは大きく変わるかもしれません。例えば仕事の有無、通勤が必要なのか、在宅ワークが可能なのかもありますし、子どもがいれば学校に通えるか(学校があるか?)も大きな要素となると思います。また自動車が運転できるかどうかも重要で、田舎になればなるほど車での移動が必須になってきます。自動車を保有することは必要条件となるでしょう。様々な要素を加味してどんな田舎がピッタリくるか考えてみて下さい。
次にまとめるメリット・デメリットはこの田舎レベルが大きくなればなるほどその振れ幅も大きくなると考えてください。
田舎暮らしのメリット・デメリット
田舎暮らしを考える際、一番気になるのがどんなメリット・デメリットがあるかということですよね。だいたい田舎暮らしを好む人は田舎ののんびりとした暮らしを思い描いておられると思います。確かにいいものです。ですが暮らしてみないとわからないデメリットもやはり存在します。そこには我慢できない類のモノもあるかもしれません。もちろんデメリットをはるかに超える心地よい暮らしがあるとは思っていますが、悪い点を知らずに飛び込んで田舎を嫌いになることは避けたいものです。
メリット -plus-
・自然の中で暮らす
山や川、海に囲まれた環境で四季の変化や日々の移り変わりを感じながら暮らす。これが田舎暮らしを選択する一番の理由でしょうか。天候の変化や季節のちょっとした動きで自然の風景はどんどん変化し、違った姿を見せてくれます。家の中のどこからも窓の外に緑や空が映るというのはやはりとても心地が良いものです。カエルの声からセミの声へそして虫の声へ、自然のBGMもどんどん変化していきます。雨の日でさえ、その感覚は街中とは違います。窓の向こうの雨に濡れる山々や稲穂の姿はまた絵になるものです。五感を刺激される日々は人間にとって「豊かな」ものです。周りの家を気にすることなく窓を大きく開けられるので、風や太陽、自然の恵みをたっぷりと取り入れることができます。カーテンを開けられない暮らしとはお別れし、開放的な暮らしが始まります。
・外で過ごす
田舎暮らしの醍醐味は外で過ごす時間といっても差し支えないでしょう。隣の家は遠く視線も気になりませんし、なんといっても自由になる土地(スペース)がたくさんあります。畑いじりをして野菜を育てたり、大きな庭で緑を育んだり、BBQやそうめん流しをしても迷惑がられることはありません。子どもたちはプールや虫探しを思い切り楽しむことができます。家の外にスペースがあるので、鯉のぼりを立てたり(田舎でも最近は少なくなってきましたが)、クリスマスツリーを植えたり、季節を楽しむ工夫もアイデア次第で色々することが可能です。
デメリット -minus-
・利便性
当たり前ですが、田舎暮らしの一番大きなデメリットがこの利便性でしょう。毎日の買い物や急に必要なものが発生した時など、場所によってはかなり移動が必要になってきます。しかし昨今のインターネットの発達により、買い物に関してはかなり利便性が向上しました。場所によっては時間がかるかもしれませんが、たいていのモノが家にいても手に入ります。日々の食料などが課題ですが、野菜を頑張って自給自足すればこの不便はかなり小さくすることができると思います。
次に仕事。通勤にはやはり街中よりも時間がかかりますし、現地で職を得ることは難しい場合も多いです。在宅ワークが可能な職種の方にとってはインターネットのインフラ事情が大きいかと思います。余談ですが、田舎の村おこしでは人に来てもらうため、まず最初にインターネットインフラの強化を行うそうです。
次に学校。こればかりは自由がきかないので、子どもの年齢に合わせて通える範囲に該当する学校があるのか、宿舎に入るのか、親が通勤に合わせて送り迎えするのか、話し合う必要があるかと思います。それから塾や習い事も当然その機会が少なくなる可能性があります。子どもに熱中しているスポーツや習い事がある場合など、よくよくリサーチしてあげてください。
それから病院です。田舎では当然病院の数が少なく、かなり遠くまで行かなければならないことも考えられます。特に持病がある方、通院の必要がある方は病院の位置をよく調べておくことが必要です。
どこへ行くにしても時間と労力がかかることを理解しておく必要がありますし、例えば車の運転ができる旦那さんが出かけていて、車の運転ができない奥さんだけの時に緊急の事態が、なんていう場合にはとても苦労します。こんな時のために田舎では近所付き合いが大切になってくるんですね。
・虫・動物
田舎にはたくさんの虫や動物がいます。自然の中なので当たり前ですね。そしてその虫たちはいたるところから家の中にも入ってきます。また来たか~、くらいで受け流せるくらいの寛容さが必要かもしれませんね。
メリット&デメリット -plus & minus-
他にもいろいろな要素がありますが、メリット・デメリットどちらにもなる要素をまとめてみました。
・気候 - 田舎は過ごしやすい?
これは場所にもよるでしょうが、おおむね山の田舎は高地にあるため、都市部に比べて夏は涼しく、夜は肌寒いくらいになるのでしっかり通風できればかなり過ごしやすくなっています。逆に冬はかなり冷え込むため、暖房費はおおきくなってしまいます。特に古民家においては隙間風がひどく暖房が大変なことがままあるのが実情です。唯一いいところは薪ストーブを採用できることです。煙が出ることと薪を確保するスペースが必要なことから都市部ではなかなか採用することができませんが、田舎では気兼ねなく使うことができます。薪ストーブは熱量がかなり大きいため古民家の暖房には最適かもしれません。(逆に高断熱の家では熱量が大き過ぎてオーバーヒートしてしまいます)薪ストーブの火を眺めながら過ごす時間もまたいいものです。
魅力的な古民家の生活ですが、一番弱点となるのがこの圧倒的な「寒さ」への対策です。古民家は断熱材という概念などない、はるか昔に、はるか昔の気候に合わせてつくられた建物です。「家は夏を旨とすべし」の精神で、深い軒で可能な限り日射を防ぎ、風を通し、夏の暑さを克服する。そのかわり冬は服を着て火をたいてしのぐ。というものです。先ほど出てきた白川郷では、冬の間、当番の人間が一晩中灯を絶やさないように時々起きて薪をくべていていた。と聞きました。それほど古民家の冬の寒さは厳しいものなのですね。
この問題をかいけつするには、住み始める前に温熱リフォームをすることをお勧めします。古い民家は基本的に断熱材が施工されていないことが多いですし、土壁塗りの壁はどうしても隙間風が発生していますので、特に冬の寒さには弱いところがあります。しかし、全面リフォームをすればかなり新築に近い状態にまで性能を高めることができます。ただし、これにはかなり費用がかかります。コストを抑えながら暖かくするには、隙間風を極力減らすことと、天井にしっかり断熱材を入れることが有効です。これは幸い古民家はつくり上屋根裏が大きく開いていることが多いので天井断熱材を入れやすいという特徴があることと、天井断熱材でふたをすることによって暖房の熱が上から逃げにくくなり、部屋の中がしっかりと温まるようになるからです。
・人付き合い - 協力関係が必要
田舎では良くも悪くも人付き合いが密になります。利便性のところで述べたように、不便だからこその助け合いが必要になるための昔からの風習です。中には一歩踏み込んだコミュニケーションが当たり前になっている地域もあるかもしれません。人付き合いが煩わしいと思う人には苦痛になるかもしれません。事実、せっかく田舎暮らしを始めたのに、あまりにも干渉が強いため泣く泣くUターンしたなんて話もちらほら聞いたりします。しかし、周りに人が少なく、不便にもさらされること、そして緊急の事態を考えると、周りの人たちとの連携・協力関係はとても大切になってきますし、長く住む人たちはそのことを実感としてよく知っている人たちです。距離感を調整しながらうまく付き合うことができれば、とても頼りになるご近所付き合いを築くことができるはずです。
・お金について
田舎暮らしにかかるお金はどうでしょうか。普通に暮らす分にかかるお金は小さくなるかもしれません。家賃などは街に比べとても安く大きな家を借りられるはずです。駐車場代もかかりません。飲みに行く回数は圧倒的に減るはず(笑)なのでその費用も浮いてきます。ただし、通勤費は大きくなるかもしれません。野菜をつくれば食費は小さくなっていくでしょう。それから気候のところでも述べたように、冷房費は下がり、暖房費は大きくなるはずです。もちろんこれは古民家の場合の話で、高性能のエコハウスを建てて住めば別の話です。
それからイレギュラーにかかってくるお金を考えなければなりません。例えば畑をする時には動物除けのネットや柵をつくる費用が必要になる場合があります。山が近ければ災害に対する備えをする必要があるかもしれません。これらは住宅地でも同じことかもしれませんが、可能性は高い、という話です。
・新型コロナ対策
田舎では密になる機会が圧倒的に少ないので、コロナ対策としては理想的かもしれません。例え緊急事態宣言が発令されて外出自粛となったとしても、出かけなくても家のすぐそばで外で遊んだり家の外で時間を過ごすことができるのはとても大きなメリットだと思います。ただ地域性によって比較的危機感が薄いところや、逆に神経質なところもあるようなので、その点の注意は必要かもしれません。
まとめ
どうでしょうか、田舎暮らしにもいろいろあることが分かっていただけたでしょうか。これを読んでも田舎暮らしにやっぱり惹かれる方、ますます古民家が魅力的に思えるという方は、ぜひどんな暮らしがピッタリくるか、もう一度田舎暮らしをよくかみ砕いてみて頂ければと思います。ハードルは決して低くないかもしれませんが、自然を感じながら過ごす日々は、やはりかけがえのないものだと思います。
ぜひよーく考えて、愉しい田舎暮らしに飛び込んでみて下さい!