子育てしやすい間取りを考える 子育ての3つのフェーズ
家を建てる大きな理由の一つが、子どもが生まれた!子どもが増えた!など、住んでいる家が手狭になったり、子どもと楽しく暮らすための住まいをつくりたい!という子育てに関わるものだと思います。子どもはとっても可愛いものですが、子育ては重労働。住まいの工夫でできるだけ子育てのストレスを小さく、そして何より子どもと過ごす時間を楽しく過ごせるようにしたいですよね。そんな「子育てしやすい家づくり」のポイントを考えてみたいと思います。
Contents
子育ての3つのフェーズ
子育てには子供の年齢に応じて大きく3つの時期に分けることが出来ると思います。
・赤ちゃん期 / 0~3才くらい
ずっと目が離せない時期。おむつの処理場所や手の届かない場所への収納、湯あみようのベビーバスを使う場所など、意外とスペースが必要な時期です。夜泣きがあることを考えると寝室とは別に仮眠できる場所があると夫婦が交代で休むことも可能になります。
・くっつく期 / 4~11才くらい
一番元気がよく、親とくっついていたい、いっぱいお話したいという、子育ての中でも最も貴重で大事な時期だと思います。子どもがのびのびと好きなことをしながらも親の目が届くような間取りが理想的です。おもちゃも増えるし、汚れ物も増えていくので、しっかり片付けできる場所や洗濯を干せる場所を確保したいものです。
・ひとりだち期 / 小学校高学年から高校生まで
小学校も高学年になるとだんだんと手を離れ、勉強にしても遊ぶにしても自分の時間を大切にするようになります。この時期に大事なのは、勉強などに自主的に取組む場所をもうけつつも、孤立しないようにすることです。勉強する場所やこども部屋をどのくらいクローズにするか、オープンにするかが一つの課題です。またみんなの集まる場所(リビングやダイニング)を気兼ねなく一緒にいられるように整えることも大切になってきます。
それぞれの時期で子どもとの関わり方も大変さも変わってきますが、大事なのはどの時期でも子育てを楽にしてくれる工夫を考えることと、子供の成長を促してあげるような設えをすることです。
赤ちゃん期の間取りを考える
赤ちゃん期にはとにかく目が離せない、寝てる時も遊んでいるときも目の届くところにいて欲しいものです。リビングやダイニングに小さな布団をしいて寝かせてもいいけれど、寝返りをするようになったり、ハイハイをするようになってからちょっとおむつを替えたりを考えると、やはりリビングダイニングのそばに小さくてもよいから畳のスペースがあるとよいと思います。何も4畳半の部屋でなくても2畳ほどあればお母さんも一緒にお昼寝することができます。子どもが大きくなってからもお昼寝や読書など床に座って活動するスペースとして、また風邪をひいた子どもを目の届くところに寝かせとくの時にも重宝しますし、何より小さな子に畳の触感・イ草の香りという自然の感触を味あわせてあげることは成長する上でとても価値があると思います。
赤ちゃん期にはベビーカーやベビーバスなど、意外と大きな器具を使うことが多くなるため、広めのスペースを用意できると便利なところがあります。
1 ベビーカー
おでかけの必需品となるベビーカーは意外と大きいです。そして濡らすわけにもいきませんから、雨のかからないところに置きたいものです。できれば玄関の中の土間を広くとったり、シュークロークを接続するなどして室内に置くスペースを確保すると便利です。室内が難しいようであれば、屋根のかかった玄関ポーチを広くとったり、玄関と一体となったカーポートを設けることで、濡れないスペースを確保するのもよいと思います。後者であれば、後々自転車を保管するのにも役立ってくれます。
2 ベビーバス
赤ちゃんをお風呂に入れる時には多くの方がベビーバスを使われるのではないでしょうか。これも意外と大きく普通の洗面台には収まりません。ですので、大型の洗面器を設けるか、洗面カウンターを広く取っておけばその上で入浴させることが可能となります。好き嫌いはあると思いますが、キッチンシンクを大きくしてこちらを使うのも一つの方法です。
3 夜泣き
赤ちゃん期には夜泣きがつきものです。なかにはしっかり寝てくれるありがたい子もいると思いますが、夜泣きに苦しんだお母さんお父さんが多いのではないでしょうか。両親二人で対応していくことが大切だと思いますが、寝室とは別に仮眠できる場所を設けておけば、お父さんが翌日の仕事のためにきっちり寝ておかないといけないとき、お母さんに一晩休んでもらってお父さんががんばって夜泣きにあたるとき、対応ができます。これは先ほど述べたリビングそばの小さな畳スペースでもよいと思います。
4 いやいや期
これも避けては通れない成長の過程です。何をしても言っても聞いてくれない大変な時期です。でもある意味最も可愛い時期でもあります。そんな時期の子どもにも親にもきっと役に立つのが小さなこもりスペースです。それは階段下のちょっとした場所でもキッチンわきの小さなデスクでも、2帖の小さな畳スペースでもよいと思います。いやいや期の子どもは泣き叫んだあとだいたいどこかへ隠れに走っていきます。で、しばらく隠れて帰ってきます。その隠れる場所がちょっと目隠しにはなっているけど目の届くところにあればとっても安心です。そしてこの時期には逆に親が隠れたくなる(休みたくなる)のも当然ありますよね。そんな時にふっとキッチンわきのセミクローズな小さなデスクで一息つくことができれば、心を落ち着けることが出来ます。この時期には親も子もちょっと心を落ち着かせる小さな場所が必要なのだと思います。
くっつく期の間取りを考える
言葉も達者になり、自分で多くのことが出来るようになり、幼稚園・保育園にも通い始め自分の友達ができ、小学校になるとさらに行動範囲が広がり自分のコミュニティが生まれてくる、そんな時期です。活発で元気がありあまっているけれど、お父さんお母さんが大好きでいつでも一緒に遊びたいし、何でもお喋りしたい。子どもの成長がよく見え、一緒に過ごすことが出来る本当に貴重で大切な時期だと思います。子育てのための家づくりはこの時期を中心に考えるべきではないかと思います。
まず大切なのは一緒に過ごすところを充実させることです。ご飯を食べる、ご飯をつくる、テレビを見る、おもちゃを広げる、机に向かう、本を読む、うたたねする、、、そんな様々な活動が緩やかにつながった空間の中のあちこちで起こり、すっと顔を上げるとみんなの様子がわかる。そんな風におおらかにみんなを包んでくれ、みんながいる場所で子どもたちがどんな活動でもできるような空間が理想的です。そう考えるとリビング・ダイニング・キッチンはあいまいにつながったワンルームのような空間になり、そこに様々な要素がくっついてくるカタチになりそうです。
1 キッチン・ダイニング
オープンなキッチンとすることでお母さんからは子供たちの様子がよく見えますし、子どもたちも料理をするということに興味を持つはずです。お母さんが楽しそうに料理しているならばなおさらです。たった一枚のお皿洗いでも、子どもが自分からお手伝いしてくれるのは本当に嬉しいものですよね。キッチンとダイニングテーブルが近いことは食器を下げたりというお手伝いにもつながりやすいと思います。
2 作業デスク・作業テーブル
くっつく期の子どもたちは親のいるところでお絵描きや勉強などをしたがります。机につく習慣をつけるのはとても大事なことですが、ダイニングテーブルを占領されるとご飯の準備をするお母さんからすると困る時もありますよね。ダイニングキッチンとは別に作業デスクがあると、子どもたちがいつやる気になっても邪魔に思うことはありません。夕飯後のまったりタイムに机に向かってもみんなと一緒にいられますし、逆にお父さんがPCなどで作業をする際にも、別室に行かなくてもみんなと一緒の空間に居ることが出来ます。時々は子どもに邪魔されることもあるかもしれませんが、大事なのはみんなが一緒の場所でそれぞれのことができる可能性を用意しておくことです。
3 ウッドデッキ・土間
感受性の強い時期です。どんどん外へ出て太陽の暖かさや風の涼しさ、自然の喜びを感じてもらいたいですね。窓を開けたせいで風が吹き込んで室内のモノが飛びお母さんに怒られることも大切な学びだと思います。LDKから直接出られる屋根のかかった雨に濡れないウッドデッキや土間があれば、みんながいる空間で外遊びもすることができ、家での暮らし・体験がもっとバリエーションが増え、豊かになっていくのではないでしょうか。
4 収納
この時期大変なのがモノの収納と片付けではないでしょうか。おもちゃなどとにかくモノは増えるし、ハサミなど子どもの手に届かないところに納めたいものもままあります。収納は多ければ多いほど良いですが、それにも限界がありますよね。この対策のためには、見える収納と見えない収納を使い分けることが有効です。子どもの使うモノは見える収納に、子どもの使わないものは見えない収納に納めます。ある時期には何でもかんでも開けてみるという時期もありますが、それが過ぎれば基本的に子どもの興味の対象となるのは見えているものです。使うものを見えるところに置くことで他の物を効果的に収納することが出来ます。
片付けの基本は①すべてのモノに帰る場所(=家)を決めてあげること。②モノを根気よく何回も何回も家に戻してあげること。
の2点につきると言われています。子どもたちがお片付けが苦手なのは、モノを納める場所(=家)がきちんと決められていないことにあるようです。親が一緒にきちんと見えるところに家を決めてあげればぐっとお片づけが上手になるはずです。もちろん出しっぱなしもあると思うので、根気も大切です(笑)
5 洗濯
おねしょをしたりご飯をこぼしたり、とにかく洗濯物が増えるのもこの時期の特徴ですよね。共働きのご両親などではどうしても夜洗濯機をまわすことになります。もちろんおひさまの下で干すのが一番ですが、部屋干しをすることも考慮が必要になってきます。小さくても大きな窓を設けたサンルームや洗濯干し室をもうけることも有効です。あえてLDKの近くまたは中に洗濯干し場をもうけることでお手伝いを促すのも方法かもしれません。
ひとりだち期の間取りを考える
小学校も高学年になってくると友達との行動が多くなり、中学・高校と進んでいけばどんどん家族で過ごす時間は少なくなってきます。これも成長のひとつなのですが、やはり家族で過ごす時間・コミュニケーションをとる時間はなんとか持ちたいものです。ひとつの方法は単純にみんながいる場所を心地よい場所にすることだと思います。例えばLDKが陽の光がしっかり入り、庭の緑を眺められる心地よい場所であれば自然と子どももそこにやってくると思います。夕ご飯の後、子どもがすぐに自分の部屋に帰ってしまわないようにするためには、LDKを窮屈な場所にしないことも大切です。ここでいう窮屈でないというのは単純に広い部屋という意味ではなく、そこで家族それぞれが別のことをしていてもうっとうしく感じないほど良い距離感をつくるということです。例えばソファと作業デスク、小さな畳スペースが別の方向を向いていたり衝立がたっていたりすれば、ひとつの空間でつながっていても精神的に距離をつくることが出来ます。そのような工夫で何となくみんなが一つの空間にいることができれば少なからずコミュニケーションが生まれてくるのではないでしょうか。
この時期の最大の課題は子ども部屋をどう考えるかだと思います。子どもとしては当然自分だけの部屋が欲しいと考えます。昔自分の部屋がなかったという経験を持つ親御さんにも子どもには自分の部屋を持たせてあげたいと考える方も多いようです。しかし、実際のところ子どもが大学生になると家を出ると仮定すると、子ども部屋が稼働するのはわずか6年前後です。そのあとは空き部屋が残るだけです。例えば子どもがひとりであればよいかもしれませんが、子どもが3人いて3部屋が空いたままというのは家のスペースを考えるととても無駄に感じられます。子ども部屋は一時的なスペースと考え運用することが長い目で見たときには有効ではないでしょうか。
子ども部屋の考え方パターン
- 完全個室 /一人一部屋収納を完備した完全な個室。広さ4.5帖~
- 小さな個室 /閉じれる部屋だけど最小限ベッド+αの空間。広さ~4帖
- ベッドルーム個室 /勉強スペースや収納は共有。ベッドのみの個室。広さ3畳程度
- 期間限定個室 /大きなワンルームを子どもたちの成長に合わせ建具や家具などで仕切って使う。子どもが巣立った後は大きなワンルームに戻せる。
- ワンルーム /大きなワンルームを兄弟みんなで使う。仕切りはカーテンなど簡易なもの。
上記のように単純に子ども部屋といっても実は考え方がいくつもあるのです。遊ぶ、勉強する、一人になる、眠る、などそれぞれの活動に必要な空間が閉ざされた空間であるのかどうかは考える余地があると思います。また本当に一人になる空間が必要になるのはごく限られた時間です。それよりもみんなで暮らす時間を豊かにすることを考えるべきではないでしょうか。
まとめ
ながながと書いてきましたが、結局、「子育てをしやすい家」は親と子どもとの関係がよくなる家だと思います。それぞれの家庭において理想とする家族関係は違うと思います。まずは夫婦で理想の家族関係を描いてそのためにどんな空間が必要か考えてみていただければと思います。なによりも、かわいい子供たちとの思い出がたくさん生まれるような家と暮らしを思い描いて欲しいと思います!
このコラムが皆さんの参考になれば幸いです。それでは楽しい家づくりを!